62人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
「……ありがと」
ギュッと蒼の腕に抱きすくめられる私の身体。
肌を通して聞こえる互いの心臓の音。
トクン。トクンと。
規則正しく刻む鼓動の音が、なんだか無性に心地が良かった。
そして……こんな風に私を求めるような仕草を見せる蒼が、何故かとても愛しく感じてしまった。
「蒼、そろそろ離して」
でもダメだ。
無意識に働く理性が、危険だと訴えかけてくる。
これは弟に対して抱いてはいけない感情。
芽吹いたばかりの今なら、まだ間に合う。
だから一刻も早く蒼から離れなくては。
「嫌だ」
「蒼……」
最初のコメントを投稿しよう!