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──だというのに、蒼の腕は簡単に私を解放してくれない。
それどころか、より強く抱き締めてくる。
「蒼、馬鹿なことしないで。私はもう平気だし、なんならタクシーでも拾って」
「俺が姉貴を好きなこの気持ちも、馬鹿なことなのか?」
「……!!」
言葉を失う。
もしかしたら“そう”なんじゃないかと、今日の様子がおかしい蒼を見ていて感じていた。
私を見つめる蒼の目は、明らかに男の目をしていたから。
「俺は、姉貴が好きだ」
「私だって好きよ? でもそれは家族として大切だから。だから、蒼の気持ちも私と同じ……」
「同じじゃねえよ!!」
諭そうとした私の言葉が、蒼の怒鳴り声に掻き消される。
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