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少しでも動いてしまえばキスしてしまいそうな距離で、蒼が私の顔を覗き込む。
その瞳を見れば、嘘や冗談なんて一切含んでいないことは一目瞭然だ。
でも、嘘でもいいから。
私は蒼が『冗談だ』と笑ってくれることを期待していた。
そうじゃないと、家族として姉弟の時間を積み重ねてきた今までの時間が、全て消えて無くなってしまいそうで。
──恐かったから。
「そう。言いたいことは分かったわ。でも、それを聞かされて私はどうすればいいの?」
「え?」
「キスでもすればいい? それとも抱きしめ返してあげればいいの?」
矢継ぎ早に言葉を吐き捨てる。
蒼を傷つけるかもしれない。
でも、そんな簡単に受け入れる訳にはいかないから。
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