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「違っ……そんな見返りを求めてる訳じゃ」
「だって、蒼が言う好きってそういうことでしょう? 私をそういう目で……!」
「違うっ!!」
耳をつんざくような怒気と叫び声。
ポタポタと頬に落ちる冷たい雫の感触にハッと我に返った。
「ただ俺は……姉貴が好きで。だから、だから…っ」
「蒼……」
姉弟の一線を越える訳にはいかないと必死だったあまりに、蒼の気持ちを少しも考えていなかった。
蒼の頬を伝う濁りのない涙を見て、自分が感じていた恐怖がだんだん馬鹿らしくなってくる。
蒼はただ、純粋に私を好きで。
今まで堪えてきた気持ちが、制御出来ないくらいに溢れてしまったんだろう。
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