本編03.濡れた肌を重ねて

2/10

62人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
  蒼を男として見れるのかどうか、考えてみる。 そうは言ったものの、大きく日常が変化したのかというと……そうでもない。 ただ、蒼の触れてくる機会は増えたように最近感じる。 ──例えば、朝目覚めた時。 「おはよー」 「はよ。……って、姉貴、髪ハネてる」 「え? どこ?」 寝ぼけ眼を擦りながら、蒼が指差す頭を撫でつける。 「あー違う。そこじゃなくて…姉貴、ちょっとこっち」 「ん……」 呼び寄せられて、警戒心無く蒼の元へ歩み寄る。 フッと影が上から覆い被さってきたかと思うと、蒼の指先が寝癖の箇所を梳いてくれた。 (あ……なんか、気持ちいい) 壊れ物を扱うような仕草で、繊細に、優しく。 私はうっとりと蒼の指先の心地よさに酔っていた。  
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加