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「姉貴の髪ってさ、指通りがよくて気持ちいいよな。ずっと触れていたくなる」
「な、何言ってるのよ」
夢見心地だった思考が、蒼の一言にパッチリと目を覚ます。
髪には神経なんて通っていないはずなのに。
そんなことを言われたら、蒼が触れた箇所が熱を持ったように熱く感じた。
胸元では、ドクドクと早鐘を打つ鼓動。
「朝ごはん出来たわよー」
「分かった、今行く。うん、これでよし」
さらりと横髪を整えてから、蒼はお母さんの呼び声に私の側を離れた。
久しぶりにこんなにドキドキした。
蒼が離れたことで、少しずつ落ち着きを取り戻してくる心臓。
最近の蒼は時折、弟の顔から男の顔になる。
蒼の告白を切っ掛けに、新たに知る蒼の一面。
今までずっと同じ家で一緒に暮らしてきたっていうのに、知らなかったのが不思議なくらいだ。
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