本編03.濡れた肌を重ねて

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  「姉貴も今帰りか?」 「うん。蒼も……あっ」 ポツン、と。 頬に落ちる冷たい雫。 「あぁ、雨が降ってきたな……って、うわっ!」 ザァァと降り注ぐ雨の粒は、小雨どころかタライをひっくり返したような激しさで私達の身体を濡らしていく。 「このままじゃびしょ濡れになっちまう。姉貴! あの公園で雨宿りしよう!」 「きゃっ…!」 強引に掴まれた腕を引かれるまま、蒼の後を付いていく。 進む先に目をやると、そこにはブランコと滑り台のみがある小さな公園。 その一角に、屋根のある休憩所のような場所があった。 蒼の足は迷わず、そこへと滑り込む。 「はぁ……結構濡れちまったな」 「ほんと。凄い雨」 ちょっとの間雨に晒されていただけで、私と蒼の服はじっとりと雨の水分を吸って重くなっていた。  
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