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私の目線に合わせるように首を傾け、長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳と視線を交わす。
そのまま蒼の顔が近づいてきて、吐息が唇を撫でた。
(本当に、このままキスしちゃうの?!)
反射的にギュッと瞼を閉ざす。
暗く見えない視界の向こう側では、蒼がゆっくりと近づいてくる気配がした。
胸のドキドキは最高潮に達する。
「……今日はこの辺で勘弁してやるよ」
「──!!」
予想していた感触は唇ではなく、おでこに触れるだけのキスを落とした。
恐る恐る瞼を開くと、苦笑混じりでこちらを覗き込む蒼。
「いくらなんでも、弟とキスなんて……流石に姉貴もまだ受け入れられないよな」
目を頑なに閉じたことで、蒼は私がキスを拒否したと勘違いしたらしい。
「……なんだ」
「ん? なんか言ったか? 姉貴」
「別に。何でもない」
無意識に呟いてしまってから、落胆している自分に気付いて驚く。
私……本当は、心のどこかでキスされるのを期待してたの?
──少しずつ変わっていく蒼への弟としてではない感情。
それを、私はハッキリと自覚した。
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