本編03.濡れた肌を重ねて

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  私の目線に合わせるように首を傾け、長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳と視線を交わす。 そのまま蒼の顔が近づいてきて、吐息が唇を撫でた。 (本当に、このままキスしちゃうの?!) 反射的にギュッと瞼を閉ざす。 暗く見えない視界の向こう側では、蒼がゆっくりと近づいてくる気配がした。 胸のドキドキは最高潮に達する。 「……今日はこの辺で勘弁してやるよ」 「──!!」 予想していた感触は唇ではなく、おでこに触れるだけのキスを落とした。 恐る恐る瞼を開くと、苦笑混じりでこちらを覗き込む蒼。 「いくらなんでも、弟とキスなんて……流石に姉貴もまだ受け入れられないよな」 目を頑なに閉じたことで、蒼は私がキスを拒否したと勘違いしたらしい。 「……なんだ」 「ん? なんか言ったか? 姉貴」 「別に。何でもない」 無意識に呟いてしまってから、落胆している自分に気付いて驚く。 私……本当は、心のどこかでキスされるのを期待してたの? ──少しずつ変わっていく蒼への弟としてではない感情。 それを、私はハッキリと自覚した。  
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