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夜中に部屋に戻り、避妊薬を飲む。
夫と同じ空間にいるのが耐えられないので、少し離れた部屋を自分の部屋として使っている。
ほんとは、もっと遠い部屋にしたいのだけど、呼ばれた時の移動時間を考慮してここにした。
「おまえを養ってるのは私だ。
お前は迷惑しかかけないのだな!
おまえとの結婚を周りは反対していた。それなのに私はおまえと結婚してやったのだ。
」
夫は、隙あれば執拗に自分を敬え!という発言をしてくる。
それと同時に、私がいかに駄目な人間で無能であるかを何度も言ってくる。
お前が! お前が! お前が!
夫の声が耳から離れない。
暴言は心を蝕んでいく。
なのに体は求めてくる。
私の気持ちを無視した夫婦の営みは耐えられない。
あんなのは拷問だ。
私は台所に行き、明日のパンを作ることにした。
気持ちが沈んでいる時は、無心になれることをすることにかぎる。
ひたすら生地をこねて、焼く。
そうしていると、余計なことは考えなくてすむ。
焼き立ては美味しそう。
少しだけ食べようかな。
おいしい。
あれ、なんか、しょっぱい?
やだ、私、泣いてる……、
声を押し殺すように、泣きながら食べていた。
過度のストレスで、自分の行動に抑制がきかない。
これ以上食べるのはよくない。
とりあえず、寝よう。
せめて夢の中だけは、楽しく過ごせますように。
翌朝、珍しく夫の姿が見えない。
台所に、メモが残されていた。
どうやら、早めに出勤したようだ。
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