いつも見る夢

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いつも見る夢

大きな桜の木の前で、私は、たった一人でたたずんでいる。  ざざあ――ざざざざあ――っ。  桜の花が、枝が――風もないのに大きく揺れる。  今にも動き出しそうなほど強く、ざわざわ、ざわざわと、枝や葉を揺らして。 (……私に、話し掛けてるの……?)  そっと幹に触れると、たちまち突風が巻き起こり、地面にある大量の花びらを、一気に上空へと舞い上げた。  舞い上げて……あっと言う間に、数え切れないほどの花びらが、私の周囲を取り囲んで……。  桜、桜、桜……。  辺り一面、桜の花びら。  完全に視界を奪った()()は、私を外に出すまいとする、意思を持った生き物のようだ。 (……まるで(おり)みたい)  急に恐ろしくなった私は、ぎゅっと目を閉じ、両手で耳をふさいでうずくまる。  ――瞬間。  辺りは漆黒の闇に()み込まれ……。  声にならない叫びを上げた後、私は――……。  私は…………。
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