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「桜?――おいおい。またぼーっとしてんのかよ?」  晃人の声で我に返る。 「あ……。ご、ごめん。ちょっと色々考えちゃって――」 「大丈夫か? 気分悪いんだったら、無理しなくていいんだぜ? どうせ俺の思いつきなんだしさ」  心配そうに顔を覗き込む晃人に、私は首を横に振った。 「大丈夫。ここまで来て引き返すの、嫌だし」 「……そうか? じゃあ――ほら」  目の前に、片手が差し出される。 「……え?」 「手、出せよ。俺が引っ張ってってやるから」 「アハハっ。――だいじょーぶだよ。一人で歩けるってば」 「いーから! 大人しく手ぇ出せって!」 「……晃人?」  晃人は顔を真っ赤にして、更に手を突き出して来る。 「……うん。……じゃあ……」  ためらいがちに右手を差し出すと、晃人はがっしりとその手をつかみ、階段を勢いよく上り始めた。 「ちょ――っ! そんなに思いっきり引っ張んないでよ!――痛いってば!」  私の抗議もお構いなしで、晃人は更に歩を進める。  そしてあっと言う間に上に着くと、鳥居をくぐり、参道の先にある大きな木の前で足を止めた。
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