神社へ

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「……ここ、だったよな。おまえが消えて、次の日また、発見されたところって」 「……うん」  この大きな木。  ……覚えてる。確か、桜の木だったはず。  この神社の御神木だって話だけど……。 「この木ってさ、樹齢何百とか何千って言われてんだってな。何百はわかるけど、何千ってのは、さすがに大袈裟な気ぃするよなー」  そう言うと、晃人は太い木の幹をぺしぺしと叩く。 「晃人! やめなってば。御神木なんだから……バチ当たるよ?」 「大丈夫だって。軽く叩いたくらいで、ボロボロ崩れちまうわけじゃあるまいし」 「それはそうかも知れないけど――」  花はとっくに散ってしまって、木には緑の葉が茂っている。その青々とした葉が、ふいに、ざわざわと音を立て始めた。 「え――?」  その音に混じって、誰かの声が聞こえたような気がして。  私は慌てて、キョロキョロと辺りを見回した。 「桜?」 「……ねえ、今――私のこと呼んだ?」 「呼んだよ? おまえが急にキョロキョロし始めるから――」 「じゃなくて! その前! キョロキョロする前!」 「……へ?……いや、じゃあ……呼んでないけど?」 「だよね?……おっかしいなぁ。誰かに呼ばれた気がしたんだけど……」 「呼ばれた?……気味悪いこと言うなよ」 「――え? 晃人?」  急に暗い声色になり、晃人は私を睨むように見つめた。
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