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「どこの誰が、おまえを呼ぶってゆーんだよ!? おまえのいる場所はここだろ!? ここ以外にあって(たま)るかよ!」 「……ど、どーしたの晃人? いきなり怖い顔して――。もしかして、私が嘘言ってると思ってる?……嘘じゃないよ。ホントに誰かに呼ばれたような気がしたから――」 「冗談じゃねえよ!!」 「――っ!……晃人?」 「おまえがいなくなった時、俺が――俺達がどれだけ心配したと思ってんだよ!? 捜しても捜しても見つからなくて……誰か変な奴にでも連れてかれちまったんじゃないかって、おまえの母さんは、それこそ半狂乱ってくらいに、あちこち走り回って、聞き回って……見てらんないくらいだったんだぞ? おまえの父さんだって、表面上は冷静さ保ってたけど……両手がずっと震えてたよ。手が震えてるのを気付かれたくなくて、自分の身体をぎゅっと抱き締めるみたいにして……真っ青な顔で、『大丈夫です。桜はきっと帰って来ます。絶対帰ります』って、何度も何度もつぶやいてた。……俺だって……俺だってずっと怖かったよ! おまえにもう二度と会えないのかも――って考えたら、すごく怖かった。もう二度と会えないとしたら、俺は桜に好きだって言えないまま――……っ!」  『しまった』とでも言うように、晃人は両手で口を覆った。
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