落とされた先は

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「姫様? いかがなされました? もしや、いずこかで頭でもお打ちになられたのでは――?」  ぺったぺったと擬音を入れたくなるような足取りで、鳥(のような生き物)が近づいて来る。 「ちょっ、待っ――! 待って待って! ストップ! ストーーーップ!!」  また『もふもふ』されたらたまんない!   ……まあ、あの肌触りは……ちょっと気持ちよかったけど……。 「――ピョ?……すとー……っぷ?」  言葉の意味が理解出来なかったのか、鳥(のような生き物)はピタリと立ち止まり、首を横に(かたむ)けた。 「大丈夫! 私は頭打って変になっちゃってるワケじゃないから! いきなり変な世界に飛ばされて、混乱してるだけだからっ!」 「……変な世界? 何を(おお)せでございます、姫様?」  再び一歩踏み出そうと、鳥(のような生き物)が足を上げる。私は慌てて両手を前に出し、ジェスチャーで『止まって』と示してみせた。 「だからこっち来ないでってばーーーっ! 私は姫様じゃないのーーーっ!」 「……ピョピョピョ?……姫様ではない?」 「そう! あなたが言ってる『姫様』がどんな人か知らないし、もしかしたら超似てるのかも知れないけど!――でもっ、とにかく私は、あなたが知ってる『姫様』とは、全く違う人間なのっ!!」  私を『姫様』と思い込んでるらしい、鳥(のような生き物)に対し、私は必死になって、別人であることを訴えた。
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