幸せを願って

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「ねえ。私から国王様に頼んであげようか? 神様が会いたがってるから、会いに行ってあげてくださいって」 「ばっ――! バカ言うなっ! オレがいつ、会いたいなんて言ったんだよっ!?」 「……言わなくても、顔に書いてあるもん」 「えっ!?……って、そんなワケあるかぁっ!!」  一瞬、顔に手をやりそうになった神様は、ハッとして頭を振り、思い切り私を睨みつけた。 「おまえ、いい加減にしろっ! そんなに戻されたいのかっ!?」 「そーゆーワケじゃないけど……。まだまだ、神様に訊きたいこと、あるし……」 「だったら、少しは大人しくしてろ! オレを怒らせたくなかったら、桜みたいに聞き上手になれっ!」  怒らせたくなかったら……って、もう怒ってるじゃん。  そんでまた、『桜を見習え』ってことになるのね……。 「神様って、ホントに桜さんのこと気に入ってたんだね。……でも、そんなに好きだった桜さんを、どうして元の世界に帰そうと思ったの?……あ。それとも、あっちの世界に戻っても、また会いに来てくれるって約束でもしてあるの?」 「約束――……なんか、してない」 「してないの? じゃあこれから先、桜さんには会えなくなっちゃうの?……それでいいの? 桜さんとは、仲よくしてたんでしょ?」 「――うるさいなッ! いいんだよ、会えなくても! オレは――っ!」  キッと私を睨みつけてから、目を逸らしてうつむく。 「オレは、桜が幸せになってくれるんなら……それでいいんだ。もう……桜が泣かずに済むんなら、それで……」 「……神様……」  ……桜さん、やっぱり泣いてたんだ……。  ……まあ、そりゃそうか。  私みたいに、飛ばされる以前の記憶を失くしてたってワケじゃなかったんだもんね。  記憶があるまま、別の世界で別人として生きなきゃならなかったなら……お気楽に過ごしてなんかいられないよね。  元の世界に戻りたくて……両親が恋しくて、きっと、たくさん泣いてたんだろうな……。  ……それに比べて、私は……。
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