怒らせちゃった!

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怒らせちゃった!

「ハァ……。可哀想な晃人」 「――は? 誰だ、あきとって?」  ……あ、ヤバイ。  うっかり、気持ちが声に出ちゃってたみたい。 「えっと……。晃人は、六歳からの私の幼馴染で、六歳までは、桜さんの幼馴染……ってことで、いいのかな?」 「おさななじみ……って、何だ?」  ……ありゃ。  神様にも通じないか。 「幼なじみは……えーと、だから……小さい頃から仲良くしてる人、かな?」 「小さい頃から……。ふーん……」  神様……今の説明でわかってくれたよね? 「――で? なんでそいつが可哀想なんだ?」 「え? えっと、それは……。桜さんが、晃人の初恋の人だから」 「……はつこい?」 「うん。初めて好きになった人、ってこと。……でも、桜さんは王子のことが好き……でしょ?」 「ああ……。そーゆーことか」  神様は、急に面白くなさそうにそっぽを向いた。 「……神様?」 「王子とかってヤツの話は、したくない。あいつのせいで、桜が何度涙を流したか……。オレはそのたびに、この辺りが苦しくなって……」  胸元の布地をギュッと握り締めると、神様は悲しそうな、腹立たしそうな顔でうつむく。 「桜が『元の世界に帰りたい』って、ハッキリ口に出すようになったのも、あいつのことがあってからだ。あいつが桜を傷つけたから、桜は泣いて泣いて……ある時、オレに言った。『もうここにはいたくない。私の世界へ帰して』って……」  う――っ。  ……そっか。  やっぱり、私の思ってた通り……だったんだ。  失恋の痛みに耐え切れなくなって、桜さんは……。 「王子ってヤツさえ、桜を傷つけなかったら……オレ達はもっと、一緒にいられたかもしれないのに」  今度は、悔しさと寂しさが混じり合ったような顔で、神様は(くう)をにらみつけた。
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