怒らせちゃった!

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 王子さえ、桜さんを傷つけなかったら……。  ……ってことは、王子と桜さんが上手く行ってたら、私は今でも桜さんの世界で、桜さんとして生きてたかもしれないのか……。  だったら私は一生……国王様に会うことも、セバスチャンに会うことも、カイルさんに会うことも、アンナさんやエレンさんや……そして、王子に会うこともなかったんだ……。 「……あれ?」  ……今、胸の辺りがチクッとした。  みんなと会えなかったかも知れないってことが、そんなに辛かった――?  それほどまでに私は……こっちの世界の人達を、好きになっちゃってるの?  ……不思議。  この世界に来て――ううん、戻って来てから、まだ二日も経ってないのに。  私はもうこんなにも……みんなのことを、大切に思い始めてる。  六歳までの記憶なんて――全然、思い出してもいないのにね。 「……おまえ、どーしてニヤニヤ笑ってんだ? 気持ち悪いヤツだな……」 「な――っ! に、ニヤニヤなんてしてないわよ! ただ、ちょっと……嬉しかったんだもん……」  私が口をとがらせると、神様は怪しむように、私をじーっと見つめる。 「嬉しいって、何がだよ? 聞いてて嬉しくなるような話なんて、オレはしてないぞ?」 「……べつに、神様の話を聞いて嬉しくなったワケじゃないわよ。私は私で、いろいろ考えてたの!」 「――って、おまえ……オレが話してる時に、別のこと考えてたのか!? とことん失礼なヤツだな!」 「ちっ、違うもん! ちゃんと聞いてたってば! 聞いた上で、いろいろ思うところがあったってこと!」  私と神様は向かい合い、互いに睨み合った。  あーもう!  どーして神様とだと、すぐこんな感じになっちゃうんだろ?  ……もっと平和的に、話し合いたいんだけどなぁ……。 「……う~~~……。とりあえず、落ち着こうよ神様。お互い、熱くなり過ぎてるよ。もっと冷静に、慎重に話し合わないと――」  でなきゃ、話が全然前に進まないような気が……。 「べっ、べつにオレは熱くなってなんか……! おまえがいちいち突っ掛かって来るから悪いんだろっ?」 「な――っ! いったい誰が突っ掛かっ――……って、だからそーじゃなくて!」
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