45人が本棚に入れています
本棚に追加
「おいっ、桜!」
いきなり大声を出されて、私はビクッと肩を揺らした。
――あ、いっけない。
ここ、学校だった。
窓際の一番後ろの席だから、陽が当たって暖かくて……つい、ウトウトしてしまってたみたい。
慌てて上体を起こし、声の主を確かめる。
「……なんだ、晃人か。びっくりさせないでよ」
晃人だった。
家が近所で、小、中、高校、全て一緒の腐れ縁。
まあ、早い話が、幼馴染ってヤツだ。
一部の女子達が、『カッコイイ』って言ってるのを耳にしたことがあるから、まあ、かっこいい部類に入るんだろう。
……付き合いが長過ぎて、イマイチ、ピンと来ないんだけど。(ごめん、晃人)
私は『うーん』と唸りつつ伸びをしてから、再び晃人の方へ顔を向けた。
晃人は『なんだ』と言われて傷ついたのか、不満げに顔をしかめる。
「びっくりさせないでよ、じゃないだろ。どうしたんだよ、机なんかに突っ伏して? なんか悩み事か?」
「べつに。悩みってワケじゃない(ウトウトしてただけだ)けど。……例のあれが、ちょっとね」
「『例のあれ』?」
「前に話したことあるでしょ? 何度も何度も、同じ夢を見るって」
「――ああ、あれか。まだ続いてんのか?」
「うん。今も見てた」
「今ぁ?……なんだ、寝てたのかよ」
晃人は『心配して損した』とでも言いたげな顔をしてから、私を軽く睨む。
でも、すぐに真顔になって、しみじみとした口調で。
「けど、大分長いよな、その夢との付き合いも?……小学校入った頃からだろ?」
「うん。十年くらいになるかな」
「十年……っつーと、おまえが『神隠し』に遭った頃か」
最初のコメントを投稿しよう!