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目覚めると、王子が
「サクラ、しっかりするんだ!……サクラ、君なんだろう? サクラ――っ!!」
……え……?
この声……王、子?
重いまぶたを、ゆっくりと開く。
眼前に、心配そうに私を覗き込む王子の姿があった。
「王……子……。どう、して……?」
「サクラ! 本当に君なんだな! よかった――!」
「えっ?……ちょ、ちょっと王子――!?」
思いきり抱き締められていることに気付き、私は慌てて身を引こうともがいた。
……でも、全然ダメ。
どんなに体を離そうと頑張っても、びくともしない。
「お、王子ってば、苦しい……。苦しいから、離――」
「嫌だ! 離さないッ!!」
私の声をさえぎり、王子が大声で言い放つ。
「な、何言って……。離さないって、そんな――」
王子の腕に力が加わり、ろくに身動きが取れないほど、強く抱き締められ……。
恥ずかしさと混乱で、頭が沸騰してるんじゃないかと思えるほど熱くなる。
「離したくない。……離すのが怖いんだ……。この腕を解いたらまた君は――私の前から消えてしまうかもしれない」
聞いたことのない、心細げな王子の声に、私の胸はキュッと締め付けられた。
心臓の音が、脳内でうるさいほど反響している。
「ど――っ、どうしてそんなこと……王子が心配する必要があるの? たとえ私が消えたとしても、桜さ――……姫様さえ戻って来るなら、その方がいいんじゃないの?」
私の言葉に、王子の体がピクリと反応する。
彼はそっと体を離すと、苦しそうに眉根を寄せ、唇を噛み締めて……きつくまぶたを閉じた。
「……私は、酷い男だ……。今更ながら思い知った」
「え?……王子……?」
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