君こそが

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君こそが

「不思議だと思っていたんだ。昨日会ったばかりの君に、どうしてこうまで心()かれるのか……。その理由が、やっとわかった。君は……君こそが本当のリアだったんだ!」  私は王子の言葉に呆然とし、セバスチャンは『ピギャッ!?』と声を上げると、そのまま固まってしまった。  これがいつもの私なら、王子の腕から逃れようと、ジタバタし続けてるはずだと思うんだけど。  何故か、そんな気にはなれなかった。  ……やっぱり、かなり動揺してたんだと思う。 「リア……! 会いたかった。ずっと君に会いたかったんだ。十年も前から、ずっと――!」  ……え?  『十年も前から』……って、どーゆー……? 「ちょ――っ、ちょっと待って下さい! 十年前って、それ……。王子は、六歳の頃の私に会ったことがあるんですか?」 「ああ。会っているよ。――と言っても、私が一方的に見掛けただけだけれどね」 「一方的に?……あの、もしよかったら……その時のこと、教えてもらえませんか?……私、思い出したいんです。その頃のこと、ちゃんと思い出したいんです!」 「……リア……」  王子が自然に『リア』と呼ぶのを、どこかこそばゆいような……そして、どこか寂しいような気持ちで受け止めながら、ギュッと目をつむる。  私がリナリアなんだと、ハッキリわかった今でも……まだ未練があるのかも知れない。『神木桜』という名前に……。 「ピッ! ピ……ピギィイイイーーーーーッ!?」  突然、セバスチャンが叫び声を上げ、私はビクッと肩をすくめた。  王子も驚いたらしく、一瞬腕の力を抜き、顔を上げてセバスチャンを振り返る。  その隙に、私は王子から身体を離し、 「ど――っ、どーしたのセバスチャンっ!? 何かあった!?」  慌てて駆け寄ると、セバスチャンは真ん丸な目を更に真ん丸にして、私を穴のあくほど見つめた。
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