君こそが

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「誠に……誠に姫様なのでございますか? あの……ご幼少の頃の、まるで男の子のように活発でいらっしゃった……姫様なのでございますか?」 「う――……うん、たぶん……。神様が、私と姫さ――ううん、桜さんが似てたから、いたずら心で入れ替えた……って言ってたし。だから私は……リナリア、なんだと思う」 「……ひ……姫様……。あなた様が、誠の……リナリア姫……様……」  う――っ。  セバスチャンってば、また……瞳なんかうるうるさせちゃって。 「姫様っ! 姫様ぁあああーーーーーっ!!……じ、爺は……爺はまたしても、姫様と姫様ではないお方の、区別がつかなかったのでございますねぇえええっ!……ああ……こんなもうろく爺を、どうか――どうかお許し下さいましぃいいいいーーーーーッ!!」  ぼふんっ!  セバスチャンが泣きながら抱きついて来た。 「セ、セバスチャン落ち着いてっ? 私べつに、気にしてないから! 私と桜さん、そっくりだったんでしょ? それに、性格変わっちゃったからって、いきなり『別人だ!』なんて考える人、普通いないってば」  どうにかなだめようと、慌てて口を開く。  だけどセバスチャンは、ぶるぶると頭を横に振り、 「いいえ! いいえっ!……そうは申しますが姫様。カイルもギルフォード様も、即座に姫様とサクラ様は別人だと、見抜かれたではございませんか! 私が!……私が、一番長い間、姫様のお側におりましたのに……。それなのに私は……」  ……マズい。  メソメソ泣き始めちゃった……。 「それは……ほら、何てゆーか……。あんまり近くにい過ぎて、かえって気付かない――なんてこと、よくあるじゃない? そんなに落ち込むようなことじゃないよ!……ねっ、セバスチャン。お願いだから、元気出して?」 「……ピ……ピィイ~~~……。ですが、ですが……。爺は、(おのれ)が許せないのでございますぅ~~~」 「……もう。セバスチャンってば……」  私は苦笑して、そっとセバスチャンの背に手を回した。  ……あったかいなぁ……やっぱり。  なんだか、すごくホッとする……。
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