幼き姫との出会い

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幼き姫との出会い

「あ――」  そー言えば、王子の話が、まだ途中だったんだっけ。 「ご、ごめんなさいっ! セバスチャンが急に泣き出すもんだから、気になっちゃって……。えっと、それで王子は……小さい頃の私を、見掛けたことがあるんでしたっけ?」  ……確か、そんな話だったよね……? 「……ああ。今でもよく覚えているよ。君に初めて会った日のことは、ね……」  王子はふっと微笑すると、昔を懐かしむような遠い目をして、空を見上げた。 「聞かせてください。今度はちゃんと、最後まで聞きますから。――だよね、セバスチャン?」 「は、はい……! 申し訳ございません。ギルフォード様、先をお続けくださいませ」  セバスチャンは慌ててとうなずくと、王子に体を向ける。 「まあ、改まって聞いてもらう話でもないが。私にとっては、大切な思い出だ。それに、リアの記憶を取り戻すきっかけにでもなってくれたら……とも思うしね」  今度は子供のようににっこり笑うと、王子は十年前の思い出を語り始めた。 「私が婚約者の存在を知らされたのは、十歳の時だったかな。隣国に姫がいるという話は、以前から聞いてはいたが……まさか、将来自分の妻になるかもしれない人だなんて、思ってもいなかったからね。初めは驚いたよ。その頃はまだ……結婚というものが、よくわかっていなかったから、拒絶感情のようなものはなかったと思う。……ただ、その話を聞いてからというもの、姫のことで頭がいっぱいになってしまってね。会ってみたくて堪らなくなった。――ある時、こっそり城を抜け出して……会いに行ったのさ。将来、私の妻になるかも知れないという、小さな女の子に――」 「会いに行った、って……どうやってですか? その時、まだ十歳だったんですよね?」 「ああ――。それは、まあ……協力者なしでは、難しかっただろうが」 「協力者?」  きょとんとする私に向かい、王子は誇らしげに微笑んだ。
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