幼き姫との出会い

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「君にセバスがいるように、私にもいるんだよ。常に側にいて、支えてくれている存在が……ね」 「支えてくれる存在……。その人が、城を抜け出すために協力してくれた――ってことですか?」 「そうだよ。初めは反対されたが、根気よく説得したら、渋々承知してくれた。――まあ、たとえ反対され続けていたとしても、どうにかして実行していたと思うけれど」 「……なるほど。そーですか……。昔っから、そんな感じの人だったんですね……」  私はげんなりして、ため息まじりにつぶやいた。 「ん? 『そんな感じの人』とは……?」 「……いえ、なんでもないです。気にせずどーぞ、先続けてください」  こんなどーでもいいことで、話を中断されたくない。  私はへららと笑って、先を(うなが)した。 「そうかい?……ええと……そういうわけで、協力者のお陰もあり、私は無事に城から抜け出して、アルフレドと共にこの国まで来たんだ。本当は、本城の方を目指していたんだが……この辺りで突然、騒がしい声が聞こえて来てね。何事だろうと気になったから、アルフレドを側にあった木に繋いで、待たせておくことにした。そして私は、一人でその声のする方へと、足音を立てないように気をつけながら歩いて行ったんだ。すると、少し離れた木の下に、セバスが見えた。セバスのことは、小さい頃に何度かこの国に来た時、見たことも話したこともあったから、知っていたんだが――そのセバスが、木の上を見上げて、何やらしきりに叫んでいた」 「叫んでいた?……私が、でございますか?」  顔を斜めに傾けて、セバスチャンが不思議そうに訊ねる。 「ああ。とても取り乱していたよ。木の下で、右へ左へ行ったり来たりと……。そして、こう叫んでいた。『姫様、危のうございます! 姫様! お願いでございますから、下りて来てくださいませ!』」 「おお! あの時のことでございましたか!……取り乱しているところをお目に掛けてしまいまして、誠にお恥ずかしい限りでございます。まさかあの場に、ギルフォード様がいらっしゃったとは……」  納得したように、こっくりうなずくセバスチャン。
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