幼き姫との出会い

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「……『あの時』? 『あの場』?……じゃあ、もしかして……その『姫様』って、私のこと?」 「もちろん。この国の姫は、君しかいないだろう?」 「……それは、まあ……そう、ですけど……」 「あの時のことは、今でもハッキリと覚えている。陽の光を浴びて、輝くような笑みを浮かべていた、木の上の幼い女の子――。心配するセバスに向かって、『セバスも来ればいーのに。気持ちいーよー!』などと、呼び掛けていたな……」 「……私は、その……その頃から、少々体が重くなって来ておりましたので……あまり、高くは飛べなかったのでございます……。ですので、そのお申し出は……丁重(ていちょう)にお断りさせていただきました……」  心なしか顔を赤らめ、小さな声でセバスチャンは告白する。  ……セバスチャン。やっぱり、ダイエットした方がいいかも……。  そのままの方が、ゆるキャラっぽくて可愛い気もするんだけど……。  せっかく立派な羽があるんだから、思いっきり飛べなきゃもったいないもんね。  ……でも、さすが私。  木登りなんて、向こうの世界でも、小さい頃はしょっちゅうやってたもんなぁ……。 「えっと……それで王子は、どうしたんですか? 木登りしてる姫が、その……婚約者だってわかって、ガッカリ……したんですよね?」  姫様が『木登り』なんてねぇ……。かなり呆れたに違いないよ……。 「がっかり?……私が? 何故?」 「え……。何故って、だって……。婚約者がそんな、じゃじゃ馬ってゆーか、おてんばってゆーか……活発過ぎると、嫌じゃありません?」 「嫌?――嫌なわけがないよ。むしろ嬉しかった」 「……へ?……う、嬉しい?」 「ああ、そうだよ。そのまばゆいばかりの明るさ、たくましさに、私は惹かれたのだから。そして、それが私の……初恋の瞬間だった」
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