唐突なプロポーズ

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唐突なプロポーズ

「……はつ……こい……?」  あまりにも意外な言葉に、私はあんぐりと口を開けてしまった。 「そうだ。君が私の初恋の相手だよ。……リア」  王子は優しく微笑み、私の頬へと、そっと手を伸ばす。  だけど、私は反射的に片足を後ろへ引き、逃れるように顎を引いてしまった。 「……リア……」  私の反応にショックを受けたように、一瞬手を震わせ、王子は力なく腕を下ろした。 「あ、あの……それで、それからどうしたんですか? すぐ自分の国に戻ったんですか?」  気まずくて、王子の顔をまともに見られなかった私は、目を逸らしたまま、話の先を促した。 「え? あ、ああ――……うん。婚約者がどんな子か、自分の目で確認出来たからね。すぐに戻ったよ。そしてその足で、父上にお願いしに行った。『リナリア姫との婚姻のお話を、正式に進めていただきたいのですが』――とね」 「えっ?……それじゃ、婚約は……王子の意思で進められたんですか?」 「そうだよ。断ることも出来る話だったが、私は一目で君を気に入ってしまったのだからね。話を進めたいと望むのは、当然のことだろう?」 「でも……なのに、今度は自分の方から、婚約を破棄したんでしょう?」  思わず、非難めいた視線を向けてしまった。  王子は私を辛そうに見返して……軽く目をつむり、ため息を漏らした。 「勝手は承知している。……だが、ああするしかなかったんだ。私は、自分の気持ちを(いつわ)ってまで、リア――……いや、あの子と共に生きることは出来なかった」 「……『あの子』……」 「そう、『あの子』だ。……私が次にリナリア姫に会えたのは、それから一年後のことだった。……前日は、また姫に会えるという喜びで、一日中落ち着かなかったよ。夜もろくに眠れなかった。……しかし、私の前に現れた少女は……すでに別人になっていた」
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