唐突なプロポーズ

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「えっ!? 別人だってわかったんですか!? 見てすぐに!?」  興奮して、つい話に割り込んでしまった。  王子は私を流し目で見てから、微かに苦笑した。 「いや。さすがに、目の前にいるのはリナリア姫とは別人だなんてことは、思いもしなかったよ。……ただ、一年前目にしたあの子とは……外見以外、全てが変わってしまったようにしか、私には思えなかった。あの子の面影は、リア――……いや、サクラには、少しも感じられなかったからね」 「でも……初恋って言ったって、子供の頃の話なんでしょう? しかも、たった一回、ちらっと顔を見たってだけのことじゃないですか。ほんの一瞬、気になったってだけの女の子のことを……まさか、十年間も思い続けてたワケじゃないんでしょう? だったら、たとえ性格が変わっちゃったとしても、桜さんには、桜さんのいいところがたくさんあったはずなんだし……。十年もあれば、そのぅ……」 「『十年もあれば』? ……『十年もあれば』、生まれて初めて心奪われた人を忘れ――目の前にいる少女を、好きになることが出来たのではないか。……君は、そう言いたいのかい?」 「えっ?……え、ええ……」  王子の瞳が冷たく光り、私を見据える。  その視線はあまりにも鋭くて、激しくて……。  目を逸らしたいと思っても、何故か、逸らすことが出来なかった。  私は王子の瞳にとらわれたまま、胸の中心辺りに置いていた手を、ギュッと握った。 「私だって、出来ることならそうしたかった。目の前にいる少女を……いつ頃からか、私を(した)うようになり……まるで、私だけが救いだとでも言うような、すがるような目で見上げて来る彼女を――……一生、守ってあげることが出来たらと。そうしなければいけないと、ずっと己に言い聞かせて来た」  視線の激しさは、次第に弱まって行って……。  王子は私からそっと視線を外すと、辛そうに眉根を寄せてうつむいた。
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