騎士見習いの帰還

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騎士見習いの帰還

 突然の王子からのプロポーズに、困惑、混乱した私は、とっさに大きく首を振った。 「い……いやいやいやいやっ! あり得ないっ! あり得ないってば、それはっ!」 「……あり得ない……」 「あ、いや――っ! べつに、王子が嫌いとか、そーゆーことじゃなくて……っ」  ショックを受けたように黙り込む王子を見て、私は慌てて首を振った。 「私、まだ十六歳だしっ! そんなの絶対早過ぎると思うしっ」 「……早過ぎる? 私の母は、十六で父に(とつ)ぎ、祖母は十四で嫁いだと聞いているが……。君の母上だって、確か十五でこの国に輿入れしたはずだよ?」 「そ、そんなこと言われても……。私のせか――いや、あっちの世界では、高校生で結婚した人なんて、そこまで多くないしっ!」 「……コウコウセイ……?」 「あ、いや、その……。と、とにかく! 結婚なんて、私にはまだ早いですっ!……この世界にだって、まだまだ全然、慣れてないし……。他にもいろいろ、覚えなきゃいけないこともあるだろうし……」 「べつに、今すぐにと言っているわけではないんだ。とりあえずは、婚約だけで構わない。婚姻は、君が落ち着いてからでも――」 「でもっ!……婚約だけだって、私は――」 「婚約……? サクラ様が、ギルフォード王子と……?」 「いや、桜さんじゃなくて、私……と――……って、えっ?」  ……この声って、まさか……。 「カイルさんっ!」  声のした方へ振り向くと、そこにはやっぱり、カイルさんがいて……。  呆然とした顔つきでこちらを見つめていた。
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