騎士見習いの帰還

3/3
前へ
/256ページ
次へ
「リア。そろそろ私にも紹介してくれないか? 彼が何者か、見当は付いているが……君から紹介してもらいたい」  王子が隣に立ち、カイルさんを見据えたまま、私の肩に手を置いた。 「へ?……あ、そっ、そーですね! えっと、こちらは姫さ――いえ、あの……護衛を任されてる、騎士見習いのカイルさんです」  慌てて紹介すると、カイルさんは、再び深々と頭を下げた。 「カイル・ランスと申します。姫様の護衛を任されてはおりますが、未だ騎士見習いの、若輩者(じゃくはいもの)でございま――」 「そうだな。見習い程度の護衛では、安心してリアを任せられない。これからも今まで以上に鍛錬(たんれん)(はげ)み、出来るだけ早く、一人前の騎士になってもらわなくては困る」 「――っ!」 「ちょ……っ! お、王子っ?」  何もそんな、『見習い程度』なんてゆー、嫌味な言い方しなくても――! 「もうっ、王子ってば! カイルさんは、まだ見習いではあるけど、人一倍努力して、立派に護衛の審査に合格した人なんだよ? それを、そんな言い方するなんて――!」 「お心遣い、痛み入ります。立派な騎士になれるよう、今まで以上に精進致します」 「――っ!……カイルさん?」  『心遣い』?  ……今のって、心遣いなの……? 「ああ、その意気だ。……期待しているよ、カイル」 「は――っ!」  ……え……えぇ~~~……?  今のが『心遣い』ってことになっちゃうんだ……?  男の人って、やっぱりよくわかんないなぁ……。  ……まあ、カイルさんに、少しも引っ掛かるところがなかったんなら、べつにいいんだけど……。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加