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不機嫌な騎士見習い
「えっと。それでね、カイルさん。あなたに伝えなきゃいけないこと、なんだけど……」
「はい」
「その……伝えなきゃいけないことが、ホントにいっぱいあってね。えー……っと……長くなりそうだから、とりあえず顔上げて?」
「――はい」
カイルさんはゆっくりと顔を上げた。
相変わらずの綺麗なコバルトグリーンの瞳が、まっすぐに私を捉える。
思わず見惚れてしまいそうになったけど、慌てて目をそらし、
「それで……。それから、そのぉ~……」
私はちらっと、横目で王子を窺った。
「あの……王子?」
「――ん? なんだい、リア?」
「え~と……。カイルさんと、二人だけで話したいことがあるんです。席、外してもらえませんか?」
「えっ?」
そんなことを言われるとは、少しも思っていなかったのか、王子は驚いたように目を見張った。
いつもキリリとしてる形の良い眉が、ちょっとだけハの字に近付く。
「しかし、二人きりというのは――」
王子に何か言われる前に、
「お願いします!」
大声で伝え、私は思いきり頭を下げた。
……カイルさんは、桜さんのことが好きだったんだもん。
なのに、彼女はもう、この世界には戻って来られないんだって知ったら、すごくショックだと思う。
もしかしたら、取り乱しちゃうことだってあるかも知れない。
そんなとこ、王子には見られたくないだろうし……王子の前では、本音で話しにくいと思うんだよね。
だから……。
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