不機嫌な騎士見習い

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「お願いしますっ!」  大きな声で、もう一度。  受け入れてもらえるまで、頭は上げないつもりだった。  すると。  頭上で、王子が深々とため息をついて。 「……わかった。君にそこまでされてしまったら、無下には出来ないからね」 「ありがとうございますっ!」  勢いよく上半身を上げ、私は満面の笑みを浮かべる。 「ただし……」  王子はそっと、私の耳元に顔を寄せると、 「私が君に求婚している最中だったことを、忘れないで欲しい。……後でまた、私のために時間を作ってもらうよ。いいね?」  ささやくと、私の頬に素早くキスをした。 「な――っ!……な……な~~~っ!」  びっくりして、金魚みたいに口をパクパクする私に、王子はにこりと笑い掛け、軽くウィンクする。 「アルフレドと、少し時間を潰して来るよ。それまでに、話を終わらせておいてくれ。――カイル、リアを頼む」 「――は!」  カイルさんに一声掛け、ひらりと馬のアルフレドに飛び乗ると、王子は颯爽(さっそう)と、何処(いずこ)かへと駆けて行ってしまった。  私は両手で頬を押さえ、呆気(あっけ)に取られたまま、遠ざかって行く王子の背中を見送る。  ……な……なんなの、あの人?  いっつも突然、変なことして来るんだから――!  ……それに、ウィンクって……。  実際にウィンクする人なんて、生まれて初めて見た気がする……(あれ? 前にも見たっけ?……でもどっちにしろ、キザな人ってことには変わりないよね……) 「ギルフォード様と、ずいぶん親しくなられたのですね」 「……え?」  気が付くと、カイルさんが私の横にいて、すごく厳しい顔つきで、私をじっと見つめていた。  なんだか、非難しているような……すごく冷たい眼差しで。  カイル……さん?  もしかして怒ってる――?  ……でも、どうして……。
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