寂しさよりも

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 私だって、もう……向こうのお父さんにも、お母さんにも、晃人にも、会えないかもしれない。  神様のこと怒らせちゃったから……私がお願いしたって、もう……もうなんにも、聞いてもらえないかもしれない。  桜さんのこと考えたら、その方がいいんだってことはわかってるけど……。  それでもやっぱり、二度と会えないのは寂しいって……どうしても、そんな風に思っちゃうんだ。  ……カイルさんは違うの?  もう二度と会えないとしても、平気なの――? 「姫様――あ、いえ……あのお方のことが好きだったのかどうか……以前にもお話しましたが、私にはよくわからないのです。もしかしたら……こう言っては失礼だと思いますが、同情……だったのかもしれません」 「……同情?」 「はい。あのお方をお守りしたいと思ったことについては、嘘偽りはありません。しかし、その気持ちが恋と呼べるものだったのかどうか……断言する自信は、正直あまりないのです。あのお方が、この世界の方ではなく、別の世界の方で……本来いるべきところに帰られたと知っても、寂しいという気持ちよりも……どちらかと言うと、ホッとした――よかったといった気持ちの方が、強い気がいたしますし……」 「……よかった? 寂しいよりも……『よかった』なの?」 「はい。〝よかった〟です。これでもう、あのお方が……寂しい思いをせずに済むのですから。一人きりで涙を流されることも、きっとなくなるのでしょうから。……そうでしょう? 姫様がいらした世界の人々は……周りにいた方々は、優しい方ばかりだったんですよね?」 「え?――あ、うん。……うん。みんな、いい人ばかりだったよ。優しくて、あったかくて……素敵な人ばかりだよ」 「……はい。あなたを――あなた様を見ていればわかります。ですからきっと……あのお方は大丈夫です。ご自分の世界で幸せになれますよ。……本当によかった……。よかったです」  そう言って、カイルさんは優しく微笑んだ。  その笑顔は、まるで春の日差しのように柔らかく、温かくて……何よりまぶしく感じられた。
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