寂しさよりも

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 ……そっか。  この人は……カイルさんは、こーゆー人なんだ。  自分の寂しさを(うれ)うよりも……大切な人が寂しさから解放されたことを、心から喜べる人なんだ。 「ホントに、カイルさんってば……」  どこまでも優しくて……いい人なんだなぁ……。 「え? 私が……どうかなさいましたか、姫様?」  きょとんと私を見るカイルさんを、私は含み笑いで見返した。 「ううん、なんでもない。……フフッ。な~んて。ひ、み、つっ」 「えっ? え……? な、なんなんです、『ひみつ』って? いったい、何のことですか?」 「だから、なんでもないってば。こっちの話だから、気にしないで?」 「そう申されましても……。気になります。お願いですから、教えていただけませんか?」 「あははっ。ダメダメ。だって内緒だもーん」 「……姫様……」  けらけらと上機嫌で笑い続ける私に、困り顔でため息をつくカイルさん。  ……ごめんね。  からかってるワケじゃないんだけど……『いい人ですね』なんて伝えたところで、カイルさんは否定するだろうし。  もしかしたら、『バカにしてる』って思っちゃうかもしれないでしょ?  誤解されるのも怖いし、改めて口にするのも、なんだか恥ずかしいもん。  それに何より……嬉しかったんだ。  カイルさんみたいな人と知り合えたことも……これからずっと、側にいてもらえることも。  ……って、ん――?  ――『これからずっと』――? 「……そっか。もう、そうとも限らないか……」 「……姫様?」  カイルさんは、桜さんを守りたいって思ったから、護衛に志願したんだもんね。  『守るべき人』がいなくなっちゃったんだから、これからもずっと護衛でいてくれるかどうかなんて、わからないんだ……。
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