忠誠の誓い

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「カイルさん、どうしたの? 具合でも悪いの?」 「いえ!……いえ、そうではございません。私は……」 「……えっ!? ちょっと、カイルさんっ?」  カイルさんはいきなり身を(かが)め、片膝をつくと、手の甲を上にした状態の右手を、私の前へと差し出した。 「……へ?……えっと……。この手って、何?」 「騎士は主君に忠誠を誓う時、両手を組んで主君の前へと差し出します。そして主君は、両手でその手を握り締める。――これが主従関係を結ぶための儀式です」 「……忠誠? 儀式……?」 「そうです。忠誠を誓う儀式です。……しかし、私はまだ見習いの身。正式な主従関係を結ぶことは許されておりません。ですが――」  カイルさんはまた、私をまっすぐに見つめた。 「私は今、この場で――姫様に一生お仕えするお許しをいただきたいのです。もしも姫様が、私を受け入れてくださるのなら……どうか、この手にお触れください。見習いの私は、片手を取っていただくことで、姫様のご了承を得たという(あかし)としたく存じます」 「……一生仕える……って、それ……」  ――本気なの?  ……ううん。  それより、そんな大切なこと……簡単に決めちゃっていいの?  私は、桜さんじゃないんだよ?  カイルさんだって、さっき言ってたじゃない。『姿は似てても、中身は全然違う』って。  ……なのに、いいの?  私なんかに忠誠誓うって……ホントにそれでいいの?
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