生涯、ただ一人

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「私はあのお方を、守るべきお方と定めてはおりましたが、生涯この身を()して仕えるべき主君と、定めていた訳ではございません。騎士にとって、主君を定めるということは何よりも重要なことなのです。そのことだけは、どうかご理解ください」  カイルさんはうやうやしく頭を下げた。 「ご理解くださいって言われても……。わかんない。それじゃますますわかんないよ! 一生を懸ける相手が主君ってゆーなら、どーして私なの? 私はカイルさんと会ってから、まだ何日も経ってないんだよ? 話だってちょっとしかしてないし――」 「出会ってからの時間や会話した回数など、大した問題ではございません。騎士が主君を定める条件、理由などは人それぞれです。こういう相手を選ぶべき――などという決まりも制約も、一切ないのですから。私は自らの意思で、生涯仕えるべき主君は姫様だと定めたのです。姫様以外には考えられないと、私自身が決めたのです」 「だ……だから、それがわかんないんだってば。……どーして私なの? いったい私のどこがよくて、主君に――なんて思ったの?」  『一生を懸ける』なんて、誰にとっても一大事だもん。何か、よっぽどの理由でもない限り、納得出来るワケないじゃない。  ……私なんて、この国のこと全然わかってないんだし……。ちょっと前までは、ただの高校一年生だったんだよ? 「何がよくて……かは、正直、私にもよくわかりません」 「そっかぁ。よくわか――……って、ええッ!?……よく、わからない……?」 「はい。ですが、『このお方しかいない』と思ったのです! 詳しい理由を問われましても、上手くご説明出来ませんが……。しかし、私が一生お仕えする主君は姫様しかあり得ない! そう思ったのです」 「……『そう思ったのです』、って……」  なんだか、一生を懸ける相手選びにしては、簡単過ぎるとゆーか……。  軽率、ってのは言い過ぎかもしれないけど……。  う、うぅ~ん……。
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