〝抱き締めたい〟衝動を堪えて

1/4
前へ
/262ページ
次へ

〝抱き締めたい〟衝動を堪えて

 ――ハッ!  ……いけないいけない。  鳥さんを怖がらせたいワケじゃないのに。  あまりの愛らしさに、つい、我を忘れちゃうとこだった……。  急激な〝抱き締めたい欲〟に駆られ、鳥さんにジリジリと近付こうとしていた私は、すんでのところで我に返った。 「あー……えーっと……違うの。この手はね、べつに鳥さんを捕まえようとしてる、とかじゃなくて。えっと……その……」 「……ピ……?」  ……ぁああああっ、やめてっ!  そんな可愛い顔で見つめないでっ!  理性が飛んじゃう! 理性が飛んじゃうからっ!!  ……う~……。  何か別の……別のこと考えなきゃ……。  落ち着け。冷静になるのよ、私。  そう……そうよ!  考えてみれば、見た目どんなに可愛くったって、あの話し方からして、中身は絶対老人! お年寄りよ!  ……うん、きっとそう!  ダメよ桜、見た目に(だま)されちゃ!! 「鳥さん、あなた何歳!?」 「――ピッ!?」  唐突な私の質問に、鳥さんはまたギョッとしたように翼を広げた。 「……とり、さん……? 姫様、先ほどからいったい――」 「いーから答えて! あなたは何歳なの!?」 「……は、はぁ……。それは以前、姫様にお話させていただいたと思うのですが……。お忘れになられたのですかな?」 「う…っ。……そ、そうなの。忘れちゃったの。ごめんなさいっ」 「……まあ、大したことではないですからな。お忘れになられても、さして不都合はございませんが――」 「だ、だよねっ? 歳なんて忘れたって、どーってことないよねっ?」  私はアハハと笑ってごまかし、鳥さんの返事を待った。 「そうですのぉ……先々代の国王様が、ご幼少のみぎりより仕えさせていただいておりますので、かれこれ……ふむ。百はとうに過ぎましたかの?」 「ひゃ――っ、ひゃくっ!?」  う……、嘘でしょーーーっ!? こっちの予想を遥かに超えちゃってるよーーーっ!!  ……ってか、鳥ってそんなに長生き出来るもんなのっ!?
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加