降って来たのは……

1/4
前へ
/253ページ
次へ

降って来たのは……

 ほとほと困り果てていた、その時。 「ピギィイーーーッ!! いい加減にせんかっ、このバカ者めがぁああーーーッ!!」 「えっ?」  突然、目の前に巨大な物体が降って来て、私はギョッとして飛びのいた。 「せ……セバス、チャン……?」  セバスチャンだった。  私とカイルさんの間で仁王立(におうだ)ちして――こちらに背を向けて立っていた。 「カイルっ、いつまでそうしてしょげておるつもりだ!? 姫様がお心を痛めておられるではないか! 誠に申し訳ないと思っておるならば、さっさと顔を上げぬかぁッ!!」  一喝(いっかつ)されたカイルさんの様子を(うかが)いたくても、セバスチャンの陰になってて確認出来ない。  でも、(いま)だ一言も発してないってことは、かなりびっくりしてて、声も出せない状態なんじゃないかな?  ……まあ、誰だって驚くよね。  私も、一瞬心臓止まるかと思ったもん……。 「ちょ、ちょっと待ってよセバスチャン! カイルさんのことをどーこーゆー前に、ちゃんと説明して! 今まで、どこで何してたの?」  ビクッと、セバスチャンの体が揺れる。  それからゆっくりと――ちょっとイラッとしちゃうくらいのスピードで振り返ると、モゴモゴと弁解し始めた。 「ど――、どこで何をと申されましても……。その……私はただ、姫様とギルフォード様のお邪魔をしてはならぬと、そう思いまして……。お二人に気付かれぬよう、そーっと、この木の上に……」 「木の上っ!?――この!? この木の上にずーっといたのっ!?」  セバスチャンが降って来た辺りを見上げ、背後の木をポンポンと叩きながら確認する。 「は、はい……。申し訳ございません……」  セバスチャンは蚊の鳴くような声で肯定(こうてい)し、ションボリとうつむいた。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加