ドキドキの要因

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ドキドキの要因

 セバスチャンの姿が完全に見えなくなるまで見送ると、私はカイルさんの顔に視線を戻した。  柔らかな蒸栗色の髪。綺麗なコバルトグリーンの瞳は、(まぶた)に隠されていて今は見えない。  顔だけの印象だと、カイルさんこそ王子様――って感じするんだけどなぁ……。  んで、第一印象でも思ったけど、王子の方が騎士。  なんだか鍛えてるみたいな体つきだし、愛馬は白馬じゃなくて黒馬だし――。  ……まあ、王子は白馬しか乗っちゃいけない、ってワケじゃないけど。  やっぱり、イメージってもんがあるじゃない?  カイルさんは……線が細いってほどではないけど、見た目は普通の少年みたいだもんね。  ……でも、もしかしたら……脱いだら意外とマッチョだったり……?  ――って、違う違う!  何考えてるのよ私!?  今は、そんなどーでもいーこと考えてる場合じゃないでしょっ!?  カイルさんが頭打って、危険な状態かもしれないってゆーのに。  細いの細くないの、マッチョだのマッチョじゃないのって……バカじゃないのっ!? 「う~~……。ごめんなさいっ、カイルさん! もう変なこと考えないからっ!」  首を大きく左右に振ると、抱き抱えているカイルさんに向かって頭を下げる。 「……ハァ。疲れた……。早く戻って来てくれないかなぁ、セバスチャン。カイルさんが心配だし、私もこのままこうしてたら、なんだか、その――」  ……妙にドキドキして来ちゃって、どーしていーかわかんないよ……。  でも、王子に感じたドキドキと、カイルさんに感じてるドキドキは、同じものなのかな?  ……だとしたら、それっていったい……どーゆーことなんだろ?  このドキドキは……もしかしたら、あの……年頃の子ならだいたい経験するとゆー……。  『恋』……ってものなんだろうか?
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