ドキドキの要因

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「ち――っ、違う違う! きっと違う! 絶対違ぁーーーーーうっ!」  再び首をぶんぶんと左右に振ると、私は大声で否定した。  ――そう。違う。たぶん違う。  ホントのホントに、違うってば。  王子へのドキドキは、あの、突然何をするかわからない困った性格に、ヒヤヒヤさせられてるから……それをドキドキと勘違いしてるだけ。  カイルさんへのドキドキは……今、この状態だもん。心配で、ドキドキしてるだけだよ。  ……うん。きっとそう。絶対そう。  そうに決まってる――!  この時の私の様子を、陰でこっそり覗いてる人がいたとしたら……。  一人で首を横に振ったり、縦に振ったり、百面相したり……と、さぞや滑稽(こっけい)に映ったことだろう。  でも、しょーがないじゃない!  こんな変な感情に振り回されたことなんて、今まで一度もなかったんだから!  向こうの世界では、晃人以外の男の子なんてほとんど気にしたことなかったし。晃人は幼なじみとしてしか認識してなかった(ごめん晃人……。でもまあ、晃人が好きなのは桜さんだったんだから、私が謝る必要はないか)  それに、周りの女の子達は、毎日のように恋だの愛だのってキャーキャー騒がしかったけど……私にはイマイチ、ピンと来なかったんだよね。  ……『恋』、かぁ……。  私にも、いつか理解出来る日が来るのかな?  そんなことを思いながら、ぼーっと空を眺めてたら……遠くから、何やら大きな動物が走って来るような……ダダッ、ダダッ……って感じの音が聞こえて来た。  ……ん?  ――どんどん近付いて来る――?
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