ドキドキの要因

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 王子の姿が見えなくなると、とたんに体中から力が抜け、私はその場にへたり込んだ。  これでもう、大丈夫だよね?  カイルさん、ちゃんと目が覚めるよね?  外傷はなかったみたいだから、脳とかに異常が見つからなければ、問題ないと思うんだけど……。  でも、ちょっと待って?  この世界の医学って、脳の異常を調べるとか、そんなレベルにまで達してたりするのかな?  そこまで考えたら、一気に不安が押し寄せて来た。  今までの印象だと、医学が進んでる世界だとは、とてもじゃないけど思えない。  だって、手紙を鳥に(たく)して、届けさせてたりするし……。  携帯、スマホはもちろんのこと、コンビニだってデパートだって、たぶんないし(この雰囲気であるってことだったら、それはそれですごい)  水道は一応あるみたいだけど、どの程度使えるものなのか、まだよくわかってないし……。  とにかく、旧時代の雰囲気、(かも)し出し過ぎてる世界なのに……。  うわぁ……めっちゃ心配になって来た。  王子には、セバスチャンもじき追いつくだろうから、それまでじっとしてろって言われちゃったけど……。  大人しく待ってなんかいられない!  一人で城に戻ろう!  私が決心した、その時だった。 「ひ……姫様ぁ~……。お、お待たせ……致し、ましたぁ~……」  今にも死にそうな声を出し、セバスチャンがヨタヨタと歩いて来るのが目に入った。 「セバスチャン!……だ、大丈夫? 足元がおぼつかないけど……」 「も……もんだい……ございま、せん~~~……。少々、頭が……くらくら、致しますが……。こ、この程度のことで、倒れる……ようなこと、は……ございま――せ――……」  バタン!  言ってる側から、セバスチャンが地面に倒れ込んだ。 「ちょ――っ! セバスチャンってば! 全然大丈夫じゃないじゃない!」  慌ててうんしょと抱き上げると、彼は、どこか遠くを見つめながら、 「も……申し訳……ございま、せん……。姫さ――ま……。やはり、私は……や……痩せ、なければ……なりません……なぁ……」  途切れ途切れにつぶやく。  ……セバスチャン……。  自分でも気にしてたんだね、体型のこと……。  私はその言葉を受け止めると、大きくうなずき、心から賛同の意を示した。
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