マズイこと?

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「……へ? なんですか? 私がカイルさんの様子見に行くと、何かマズイことでも?」 「まずいよ。まずいに決まっているだろう?」 「はぁ……?」  困惑顔で告げる王子に、私は首をかしげた。  マズイって……何がマズイんだろ?  寝込んでる人の様子が気になるのは、当たり前のことだと思うけど……。  きょとんとする私の頭にそっと手を置くと、王子は噛んで含めるように、 「今は気を失っているとしても、いつ目覚めるかわからないだろう? アンナだって、席を外すこともあるだろうし……。そんな部屋の中で、君と彼とが二人きりになるなんて、考えただけでも胸が騒ぐよ。正直に言えば……彼のところには行かないで欲しい。つまりは、そういうことだ」  などと、少し顔を赤らめながら告げるのだった。  ……え……。二人きり、って……。  『胸が騒ぐ』――?  カイルさんのところには行かないでくれって、それはつまり……。 「え……えっ!?……いやっ、だってそんな! カイルさんは桜さんの護衛だった人で――っ! そりゃ、今は私の護衛をしてくれてますけど……でもそれだって、桜さんがいなくなっちゃったからで、だから――っ」  王子が心配してるようなことには、絶対なりませんってば! 「本当に? 彼をただの護衛としか思っていない? 君も彼も――お互いに意識していないと、ハッキリそう言い切れるかい?」 「――っ!……そ、それは……」  真摯(しんし)な眼差しで訊ねられ、思わず口ごもる。  ただの護衛……。  カイルさんは私の……ただの護衛?  ……わからない。  わからないよ、そんなの。  だってまだ、カイルさんのことよく知らないし……。意識するもしないも、そんなの……。  ――だって、そんな風に言われちゃったら――!
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