マズイこと?

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「もうっ! どーしてそんなこと訊くんですかっ!? 王子がいきなり変なこと言い出すからっ! 意識なんてしてないのに……してなかったのにっ! そんな訊き方されたら、なんかもう――妙に気になって来ちゃうじゃないですかっ!」 「……やはり、気になるのか……」 「だからっ! 王子がそんなこと訊かなければ、気になんかしなかっ――?」  強い力で引き寄せられ、一瞬にして、私は王子の腕の中に収まっていた。 「ちょっ、また――! い、いー加減にしてくださいっ!――離してっ! 離してってばっ!」 「離さない。……君が私のことだけを見てくれるまで、絶対に離さない」 「な――っ!……何をまた、バカなこと――」 「バカなことを言っているのはわかっている!……わかってはいるが……どうしようもないんだ」 「……王子……?」  少しも余裕の感じられない王子の態度に、私は困惑した。  昨日まで余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)としてて、憎たらしいくらいだったのに……。  私をからかっては、クスクス笑って。何かと子供扱いされて、悔しくて堪らなかったのに。  今の王子からは、そんなの少しも感じられなくて……。 「君のことになると、気持ちの抑制(よくせい)が利かない。……見苦しいとわかっていても。やめろと、どんなに心が叫んでも、(はや)る心をどうすることも出来ない。君を前にすると、王子としての立場や体裁(ていさい)など、どうでもいいとさえ思ってしまう。……こんなことは初めてだ……」 「王……子……」  耳元で響く切なげな声が、私の抵抗力を奪った。
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