王子の熱情

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 ……変えた?  変えたって、私が?  王子のことを?  王子がこんなに辛そうなのは……私のせい、なの……?  息苦しさと、あやふやな後ろめたさにめまいがする。  王子は、決して私を責めてるワケじゃない。  でも、苦しめてる原因が私なら……やっぱり、私が悪いんじゃないかって。私に落ち度があったんじゃないかって、妙に落ち着かない気分になって……。 「君の前では、私はただのちっぽけな男だ。くだらない嫉妬に胸を焦がし、身勝手な独占欲に(とら)われ……時折、我を忘れて君を困惑させてしまう。強引に想いを押し付けても、迷惑がられるだけだとわかっているのに。……止められない。止められないんだ。いつか君に、完全に拒絶されてしまうかもしれない。そんな恐れを、常に抱いているのに……どうしてもダメなんだ」  吐息まじりのささやきが、耳をくすぐる。  ……どうすればいいんだろう?  王子が弱気になってる今、何か気の利いたことでも言って、安心させてあげたい。  そんなに苦しまないでくださいって、伝えたいけど……。  でも、王子を苦しめてるのは私なんだから……いったい、どうすればいいのか……。  王子を苦しめたくない。  王子には、いつも笑ってて欲しい。  意地悪だけど……いつも突然、変なこと言ったり、したりするけど……。  でも、私……王子のこと、嫌いじゃない。――ううん、好き。  好き……なんだと思う。  好き、だけど……。  正直なことを言えば、私……カイルさんのことも気になってる。  カイルさんが桜さんのことを好きなら、応援したいって最初は思ってたのに。  好かれてる桜さんが羨ましいって、胸がズキズキすることも何度かあった。  だからホントは、カイルさんの口から『同情だったのかも』って言葉が聞けた時、一瞬、ちょっと――ううん、かなり嬉しかったんだ。  王子に対する気持ちと、カイルさんに対する気持ち。  それが『恋』ってものなのかどうかは、まだよくわからないけど……。  カイルさんのことが気になってる。――これも事実。  王子のことが好き。放ってなんておけない。――これも事実。  自分でも、どっちの気持ちの方がより強いのかなんて、全然わからない。  ……嫌だな。自分の気持ちがわからないなんて。  二人とも好き、なんて……。  私はいつから、こんなに優柔不断で、嫌な子になっちゃったんだろう?
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