王子の熱情

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「あの……。王子は私に、どうして欲しいんですか?」 「――え?」 「王子を苦しめてるのは、私なんですよね? だったら、私はどうすればいいんですか? どうしたら、王子は苦しみから解放されるんですか?」 「……リア……」 「私が……私が王子のこと好きって言ったら、王子のことだけが好きって言ったら、その苦しみは、王子の中から消えてなくなるんですか? 嫉妬とか、独占欲とか、そんなもの全部……感じなくて済むようになるんですか?」  頭に浮かんだ言葉を、次から次へと口に出しながら。  私は王子の背中に手を回し、上着をギュッと掴んだ。  抱き締め返す勇気なんかなかったし、まだ気持ちのハッキリしてない私には、そうする資格もないと思ったから。  ……でもこれじゃあ……必死にしがみついてるって感じで、なんだかカッコ悪いなぁ……。 「君が私だけを好きになったら……嫉妬や独占欲から解放されるのか、か……」  王子は独り言のようにつぶやくと、小さくため息をついた。 「……いや。それは無理だろうな。君が私だけを見てくれたとしても……それらの感情から逃れることなど、きっと出来はしない」 「そんなっ! どうして――!?」 「それが……『人を好きになる』ということだから、だろうね。……まあ、そういう感情とは無縁だという人間も、いるのかもしれないが……。少なくとも、私には不可能だ」 「不可能って……。だって、それじゃ……私はどーしたらいいの? 何をしても、王子の苦しみは消えないってゆーなら……私にはもう、どーすることも……」  王子は無言のまま、抱き締めていた手を解いた。  それから後ろに手をやって、私の手を優しく外し、顔の前まで持って行くと……指先にそっとキスする。 「――っ!」  不意打ちを食らって、心臓がドクンと跳ね上がった。  ……ホントにもう、どーしてこの人は……。  こーゆー恥ずかしいことを、真顔で出来ちゃうんだろう? 「ありがとう、リア。君は本当に優しいね。……けれど、その優しさは……今の私には、少々酷だ」 「えっ?……酷、って……?」  王子の寂しげな微笑みに、ひやりとした。
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