罠に掛かった姫

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「リア、君は本当に可愛いね。……だが、こうも簡単に警戒していた相手に隙を見せてしまうとなると……少し心配かな」 「――は!? 心配っ? 何がですかっ!?」  訊ねつつも、私は往生際(おうじょうぎわ)悪く、王子の手からどうにかして逃れようと、渾身(こんしん)の力を振り絞って抵抗を続けていた。  それでも王子は顔色ひとつ変えず、 「何がって……。君を狙って、他の男が同じようなことを仕掛けたとしたら困るだろう? 君はやはり、たやすく罠に掛かってしまうのだろうし……」 「な――っ! そんな心配しなくても、こんなことする人、王子くらいしかいませんっ!」  ……ホントに、こんな意地悪な人初めてだ。  あっちの世界では、私の周りにいる男子は、みんなどこか子供っぽかったし、意地悪の仕方も、呆れるほどレベル低くて……。  言い返したり反撃したりなんてことは、簡単に出来た。  私が意地悪されっぱなしで終わる――なんてことは、絶対なかったのに。 「そうかな? 君は、男という生き物が本当はどんなものか……特に、どうしても手に入れたいと思っている人を前にすると、どう変わるのか、まだ理解してはいないだろう? 男が欲望に駆られて本気を出したら……怖いよ?」  一瞬、王子の瞳が(あや)しく光り……ゾクッとした。  怖いって……王子のことが怖いって、ちょっとだけ思ってしまった。  でも、そんなこと覚られたくなくて、 「怖い? 怖いって、何がですか?――確かに、こうやってムリヤリ体の自由を奪われて――次に何されるかわからないって状態は怖いですよ。でも……でも王子は、私が心の底から怖がったり嫌がったりするようなこと、しませんよね? いいえ、出来ないはずです」  ……なーんて、強気に出てしまい……。 「ふぅん……? 君がそう考える根拠は何? 私に、君を好きだという弱みがあるから? 好きな相手に嫌われるのが怖いから、私は何も出来ない。出来る訳がないと――そういうことかな?」 「そ――っ、……そうは言ってません、けど……」 「では、どうして? 私が何も出来ないと思う理由を、是非とも教えてもらいたいな」 「――っ!」  ……マズイ。  なんだかわからないけど、王子の瞳の輝きが……ますます強くなったような……? 「ねえ、リア?……教えてくれないのかい?」 「う――、うぅ……」 「君がそう思うのは、何か確信めいたものがあるからだろう? だったらそれを……ハッキリと口に出して、説明して欲しいんだが」 「う……、うぅぅぅ……っ」  ――ヤバイ!  完全にヤバイ!!  王子の顔が、どんどん近付いて来るよぉおおーーーッ!!
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