キスまでの距離

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キスまでの距離

 王子からの怒涛(どとう)の告白&抱擁(ほうよう)アタックに、私はパニック寸前(すんぜん)だった。  異様なまでの体温上昇、発汗、めまい、呼吸困難。  様々な症状が一度に襲い、苦しくて倒れそう。  今まで、恋愛とはまるで無縁な生活送って来た人間に、いきなりこれは……。  さすがに、刺激強過ぎますってばっ!  ――ダメ!!  もう、ホントに限界ッ!!  そう思って、私が王子の体を押しやるのと、王子が腕の力を弱めるのが、ほぼ同時だった。  予想以上に私の体は王子から大きく離れ、バランスを崩して……そのまま後ろへ倒れ込みそうになる。 「ひゃ――っ」 「リア!」  素早く私の手をつかんだ王子は、もう片方の腕を腰に回し、すんでのところで私を受け止め、 「……リア……」 「王……子……?」  気が付くと、互いに見つめ合う形になっていた。  ――心臓がドキドキを通り越して、バクバクになってる――。  恥ずかしいから、目を逸らさなきゃって思うのに。  光の角度によって、琥珀色(アンバー)に見えたり、萌黄色(ライトグリーン)に見えたりする、王子の瞳がとても綺麗で……吸い込まれそうなほどキラキラ輝いていて……逸らせない。  それに、なんだか今日の王子って……変。  なんとなくだけど……いつもの王子じゃないような気がする。  ……だって。  王子はこんな風に、すがるような――今にも泣き出しそうな心細げな目を、私に向けたことがあったろうか?  見ている方が、切なくなって来るような……胸が痛くなるような、そんな瞳で……。
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