キスまでの距離

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「リア……」  長い――長い沈黙の後。  王子は私の名をそっとつぶやくと、少しずつ……少しずつ、顔を近付けて来た。  ……え……?  ちょ――っ、ちょっと待って?  この状態って、まさか……。  王子の顔が、更に近付く。  やっ、ちょ――っ、ちょっと待ってってば!  これって何!? この状況って何!?  またいつもの悪い癖!?  王子の顔があと十五センチ――。  いやっ、だからっ!  この角度はマズイでしょっ?  王子の顔があと十センチ――。  だ――っ、ダメダメダメダメっ!!  このまま進んじゃダメッ!!  王子の顔があと五センチ――。  ダメーーーッ!!  絶対ダメぇえええーーーーーッ!!  このままじゃ、くっ、唇に――っ!  私まだ、気持ち定まってないのにッ!  王子の唇が一センチ前まで迫った瞬間、私はギュッと目をつむった。  だけど、十秒……二十秒……三十秒経っても、私の唇に王子の唇が触れる気配はなかった。  ……あれ?  王……子……?  ――ハッ!  もしかして、またからかわれたっ!?  カーッとなって目を開けると、とっくに離れてると思っていた王子の顔が、十センチと離れていないところにあって、私の体はカチーンと固まった。  ……まさか、ずっとこんな距離で……顔を見続けられてたのかな……?  そう思ったら、めちゃめちゃ恥ずかしくて、一気に顔が火照(ほて)ってしまう。 「あの……。王、子……?」
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