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「神様って、じゃあ……この木に何かお願いしたら、叶えてくれるってこと? 何かご利益あるの?」
「ごり……やく……?」
鳥さんは、再び首をかしげた。
やたら首かしげてばっかだなぁ……って、私がそうさせてるのか。
でもまあ、いいや。
とにかくこの世界では、この木は神様なんだ。
実際に願い叶えてくれなくたって、ご利益なんかなくたって、この木を神様だと信じる人がたくさんいたら、それでいいんだ。
……そういうこと、なんだよね?
考えてみれば、私の世界でだって、同じようなもんだもんね。
「えっと……神様ってことは、この木はずっと……ここにあるんだ?」
「はい。遠い遠い昔より、神様はこちらで、私達を見守り続けてくださっているのです」
「……そっ……か」
じゃあ、似てはいるけど……私の世界の桜の木とは、別の木なのかな?
桜……でもなかったりして。
「鳥さん、この神様って、なんて名前?」
「――は? 名前……?」
「うん。桜じゃないなら、なんてゆーのかなーって」
「……神様は神様でございます。名などございません」
「えっ、名前ないの!?」
「はい。神様は神様としか呼ばれておりません」
「嘘……。名前ない木ってあるんだ……? じゃあ、別の場所にあるこの木は、みーんな神様って呼ばれてるの?」
私の質問に、鳥さんはまた、不思議そうに首をかしげた。
「別の場所?……姫様、神様は唯一絶対の存在でございますぞ。神様は、この場所にしかいらっしゃいません」
「……え……?」
他の場所には、いない?
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