姫様の部屋

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「姫様。お疲れのところ恐縮(きょうしゅく)ですが、お部屋で少々お待ちくださいますか? まずは私から、国王様にご報告して参りますので」  お城に着いた途端、鳥さんにお願いされて、私は今、『姫様の部屋』で待機中ってワケなんだけど……。  天蓋(てんがい)付きベッドとか、アンティークっぽい装飾の家具とか調度品ばかりで、なんだか落ち着かない。  私の部屋、もっとシンプルだから……。  女の子っぽいところを()げるとすれば、ぬいぐるみがいくつか置いてある……って程度かな。   ぬいぐるみはねぇ……あのもふもふ感がねぇ……(たま)んないんだよねぇ。  やっぱぬいぐるみは、抱き心地いいのが一番だと思うんだよ。  ふわふわでもっふもふで、ギュッと抱きしめたくなっちゃうようなのが。  抱き枕としても優秀だし、話し相手にもなる(ちょっとアヤシイ?)しで、部屋には欠かせない存在だよね!  難があるとすれば、洗濯するのに気を遣うところと、痛んじゃったら修復が難しいところと……えーっと、あとは……。  ――なんてことを考えてたら、いつの間にか顔が百面相(ひゃくめんそう)しちゃってて、ハッと我に返る。  ……いけない、いけない。  今はぬいぐるみのことを、呑気(のんき)に考えてる場合じゃなかった。  私は腰掛けたベッドで足をぶらぶらさせながら、深々とため息をつく。  待てと言われても、慣れないところじゃ気持ち的に(くつろ)げないし、暇をつぶせるアイテムもない。  いい加減飽きて来て、私は思わず独り言を漏らした。  「鳥さん、遅いなぁ……。私の話、信じてもらえなくて()めてる……とかじゃ、なきゃいいけど……」
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