神隠し

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「おい、どうしたんだよ? またぼんやりしやがって」  私の顔の前で、晃人が片手を左右に振ってみせる。  あえて無視して、私はポツリとつぶやいた。 「……考えてたのよ」 「考えてた? 何を?」 「……『神隠し』」 「神隠し、って……今? ずっと?」 「そう。……今、ずっと」  晃人は困ったように眉を寄せ、軽く頭を()いた。 「……ん~……、そりゃ、思い出させちまったのは俺だけど……。今更あれこれ考えたってさ、答えなんか出ないんじゃないか?」 「そんなことわかってる!!……わかってる、けど……」  声を(あら)らげてしまい、私はハッとして口をつぐんだ。  晃人は、再び困ったように頭を掻くと、ためらいがちに切り出す。 「そんなに気になるならさ。久し振りに行ってみるか、あの神社?」 「――え?」 「おまえが辛くなるんじゃないかと思って、今まで()けてたけど……。どうしても気になるってんなら、あの神社行ってみてさ、気の済むまで考えてみればいいじゃん。何か思い出せるようなこと、あるかもしれないしさ」 「晃人……」  私が『神隠し』に遭った、あの神社へ――。  ……正直、ちょっと怖い気もするけど。  このままずっと、スッキリしない気持ちを抱えたままなのも嫌だ。 「……うん、わかった! 行ってみよう、あの神社へ!」  わざと大きな声を出し、自分を(はげ)ます。  ……大丈夫。晃人も一緒なんだから。  神隠しになんてもう、遭うワケないんだから――。
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