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眠りたくは無かったのに、魔法にかけられたようにいつの間にか朝が来た。
散らかった枕、テーブルの上のコップ。
昨日までここにいた痕跡はあるのに、ミコトはもういない。
『…。』
ミコトがいなくなった部屋。
ミコトとの思い出が失われた部屋。
ひとつずつ、ミコトとの思い出が失われていく部屋で、奇跡で、悪夢みたいな、日々だった。
『…なくなっちゃったなあ。』
左手のひらを開いたり閉じたりしながら、大切にしていたモノたちを思い出す。
もう何ひとつ、ここにはない。
『…うん。引っ越すか。』
それでも生きていかなくちゃいけない私が、ここにいる意味はなくなった。
グルリと見渡すとベッドのサイドテーブルに見覚えのないノートが置かれていた。
『…?』
表紙に何も書かれていないノートに手を伸ばす。
この家に私の知らないものなんてない、そう思いながら表紙をめくった。
『財布…の絵、』
1ページ目にあったのは、財布のイラスト。
一瞬頭で考えて、ハッと気付く。
それを確かめるように、2ページ目、3ページ目と進める手を急ぐ。
次からはチェキで撮られた写真がマスキングテープで貼られている。
旅行先で買った揃いの茶碗
記念日に渡したアルバム
一緒に育てていたパキラ
『これ…』
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