死んだミコトが帰ってきたら

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*** 眠りたくは無かったのに、魔法にかけられたようにいつの間にか朝が来た。 散らかった枕、テーブルの上のコップ。 昨日までここにいた痕跡はあるのに、ミコトはもういない。 『…。』 ミコトがいなくなった部屋。 ミコトとの思い出が失われた部屋。 ひとつずつ、ミコトとの思い出が失われていく部屋で、奇跡で、悪夢みたいな、日々だった。 『…なくなっちゃったなあ。』 左手のひらを開いたり閉じたりしながら、大切にしていたモノたちを思い出す。 もう何ひとつ、ここにはない。 『…うん。引っ越すか。』 それでも生きていかなくちゃいけない私が、ここにいる意味はなくなった。 グルリと見渡すとベッドのサイドテーブルに見覚えのないノートが置かれていた。 『…?』 表紙に何も書かれていないノートに手を伸ばす。 この家に私の知らないものなんてない、そう思いながら表紙をめくった。 『財布…の絵、』 1ページ目にあったのは、財布のイラスト。 一瞬頭で考えて、ハッと気付く。 それを確かめるように、2ページ目、3ページ目と進める手を急ぐ。 次からはチェキで撮られた写真がマスキングテープで貼られている。 旅行先で買った揃いの茶碗 記念日に渡したアルバム 一緒に育てていたパキラ 『これ…』
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